横領

経理社員による横領事件:採用時の背景調査の重要性

ある企業が元銀行員の20代女性を経理担当として採用した。
入社後、税理士から経理処理の不正を指摘され、調査の結果、200万円の現金を横領していたことが発覚した。証拠を提示しても本人は「知らない」と否定し続けたが、最終的に自主退職した。その後、元勤務先の銀行に問い合わせたところ、彼女が銀行員時代にも横領行為で退職していた事実が判明。某探偵事務所によると、横領の再犯率は約80%に上るとされる。

本事例では、採用時の背景調査の不足が問題の核心にあった。経理のような金銭を扱う職務では、信頼性が極めて重要であるにもかかわらず、履歴書の確認や前職への照会が不十分だった。
横領は刑法245条に定める業務上横領罪に該当し、7年以下の懲役が科せられる可能性があるが、企業側は刑事告訴せず、自主退職で処理した。
この選択は、企業の評判を守る意図があったと推測されるが、再犯リスクを考慮すると、適切な法的措置や情報共有が求められたかもしれない。

横領事件は、企業の財務だけでなく、職場全体の信頼関係にも影響を及ぼす。防止策として、採用時に前職の退職理由を詳細に確認し、可能であれば第三者機関を活用したバックグラウンドチェックを実施することが有効である。また、経理業務では、複数人によるチェック体制や定期的な監査を導入し、不正の早期発見につなげるべきである。本事例では、税理士の指摘がなければ発覚が遅れ、被害が拡大していた可能性もある。

この事件から得られる教訓は、採用プロセスの強化と内部統制の徹底である。特に金銭を扱う職務では、過去の職歴や行動パターンを慎重に評価する必要がある。某探偵事務所が指摘する80%の再犯率は、横領者が同様の環境で再び犯罪に走る傾向を示しており、企業はこれを軽視できない。採用時の慎重なスクリーニングと、日常的な監視体制の構築が、類似のリスクを最小限に抑える鍵となる。企業は本事例を参考に、信頼できる人材の確保と不正防止策を両立させる労務管理を構築すべきである。

・参考
刑法245条(業務上横領罪) - https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=140AC0000000045
厚生労働省:採用時の留意点 - https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/